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ルイーノの市場 il mercato di Luino

普段は静かな湖畔の街
でも毎週水曜日には・・
ルイーノは北イタリア、ロンバルディア州ヴァレーゼ県にある街です。スイスとイタリアを跨ぐ縦長のマジョーレ湖の東岸で最も大きく、人口は1万5千人ほど、街の歴史は1439年までさかのぼります。当時はトレーザ谷を抜けてルガーノ湖へ行く最短ルートとして、またミラノやコモなどの都市と結ぶ拠点として発展しました。1541年に神聖ローマ帝国のカール5世から市の開催権を与えられ、その伝統は今も残っており毎週水曜日には街の大通りに400店近くの露店が並ぶ大市が開かれます。国内でも1,2を争う大規模なルイーノの市場はヨーロッパでも有名で、イタリア国内のミラノやコモ、ヴァレーゼからはもちろん、隣国スイスからも大勢の客が訪れます。ドイツやフランス、オランダなど遠方から観光バスでわざわざやってくる団体もいるほど。マジョーレ湖関連のガイドブックには必ず載っているので、市場が大好きなヨーロッパ人には外せないイベントなのです。普段は静かな大通りも水曜日には車両通行禁止の歩行者天国になり、左右にずらりと露店が並び、人ごみで前に進むのも困難です。近隣の駐車場は満車なので郊外の路上駐車がひどく、そもそも渋滞で街まで辿り着くのも大変。3つの大通りと隣接する袋小路や駐車場が全て市場通りになるので、全体を見て回るのも一苦労です。聞こえてくる言葉も様々なイタリア語にスイスドイツ語、ドイツ語、英語、オランダ語と様々で、とても国際的です。

と言うと映画やガイドブックで見るような南欧風の素敵な市場が想像できるでしょう。青い空、菩提樹なんかの並木の下に縞模様のテントのついた屋台が並び、陽気なイタリア人が今朝採れた野菜や、自家製のチーズの塊を売っている − 別の店先にはあらゆる種類のサラミが吊り下げられ、ヒゲのおじさんが試食を勧めてくる − かわいいビンに入ったオリーブ油やハーブ、手作りのジャムやリキュール、パンとお菓子の屋台から漂う甘い香り、花屋の店先の様々な切り花・・・ こんな市場なら私も毎週行きたいものです。
しかし、残念ながらこういった市場の風景は、現在はどこにも存在しません。市場(ちなみに英語ではマーケット、ドイツ語ではマルクト、フランス語ではマルシェ、イタリア語ではメルカート)の現状は次のようなものです。

晴れて青い空ならラッキー、曇りや雨の日でも市場は開催されるので灰色の空の場合も多い。通行止めの市場通りにずらりと並ぶ軽トラックやボックス車は移動式の屋台で、屋根には折りたたみ式の薄汚れた白いテントが付いていて、これを広げて車のスライドドアを開ければたちまち屋台の出来上がり。店先には色とりどりの安物の服、ジャケット、ワンピース、ブランドロゴのTシャツ、何でもある。ブランドのスニーカーや流行のブーツ、サンダルもある。隣には高級ブランドの皮バッグがずらりと並ぶ。売っているのは気さくなアフリカ人。別の店では中古の家電や細々した日用品、加えてブランド物の帽子やベルト、下着、まさによろづ屋と言うべき品揃えで熱心に商売をするアジア系の人々。こういう屋台が3分の2以上を占め、残りは一応野菜や花、パン、お菓子、チーズやサラミなどを売っているが、常温で人々が行き交う中、むき出しの野菜は元気がなく、チーズは不快なにおいを発し、パンやサラミは埃にまみれている・・・

これは決して皮肉っぽく面白おかしく描写した風景ではなく、実際の市場の様子です。3メートル近い高さに隙間なく吊り下げられた中国直輸入の衣料品、堂々と売られているヴィトンやグッチのコピー、ロゴが逆になっていたりするアディダスやナイキ、手に取っただけで壊れそうなロレックス・・・売っているのはアジアかアフリカ人の売り子でとても気さくに世界はみんな友達、と話しかけてきます。これが市場のほぼ全てなのです。袋小路の一角に野菜や食料品を売るイタリア人(と思われる)の屋台もいくつか見られますが、冬場はともかく夏場は食中毒が心配されそうで、私は敬遠してしまいます。本当は地元の生産者を支援するために買ってあげるべきなのでしょうが。しかし地元の生産者が地元の青空市で売る、というのももはや昔の話で、今は観光客目当てに中央市場で仕入れた輸入野菜を青空市で売っていたりするので、それも当てにできません。

(市場通りのスタート地点)

(この通は両側全てが衣料品の屋台)

(ブランドジーンズ、バッグに靴に香水に、なんでもあります)

(次の大通りも同じ光景)

(裏の袋小路の駐車場には一応生鮮品を売るスタンドがあります)

(ただし常温むき出しディスプレイ)

(オリーブの量り売りとサラミの屋台 一応装飾はイタリア風で売り子もイタリア人)

(色とりどりの野菜果物 値段はスーパーマーケットとだいたい同じ)

(カラフルなグミや砂糖菓子を売る屋台)

(お花屋さん 切り花だけでなく鉢植えや苗木もあります)


いかがですか。市場の雰囲気が多少伝わったでしょうか。中国製の服とブランドコピーがほとんどでも、ルイーノの水曜市はとにかく規模が大きいので見て回る価値はそれなりにあります。外国人の売る安物衣料のごった返しというマーケットの現状を肌で感じるのもある意味海外旅行の醍醐味かも知れません。ただし、友好的なアフリカ人の甘い言葉に騙されて変な買い物をしないようにすることと、スリ、盗難には気をつけましょう。バッグの口を開けて財布を丸出しにして市場を歩く旅行客は軽犯罪者の格好の餌食ですから、貴重品はしっかりと管理することです。



ちなみに市場が夕方5時過ぎに終わると、屋台の車は屋根を閉じて品物を積みこんであっという間に撤収し、清掃車がやってきて道路掃除を始めます。30分もすると通行止めは解除され、街は何事もなかったかのように平常に戻ります。

(さっきまで野菜果物の屋台があった一角)

ルイーノはミラノから車で1時間程度の距離なので、近辺滞在で時間があったらのぞいてみるのもいいかもしれません。市場の日以外にもかわいいお店やピザ屋、カフェもたくさんある湖畔の観光地なのでじゅうぶん楽しめます。ちなみに主人と私が毎週末訪れるイタリアの街でもあります。イタリアの日常を味わいたい方は是非どうぞ。





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