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上から見たドイツ(と日本)

空は青、畑は緑と

黄色??

飛行機でドイツ上空を見降ろしたことのある方は必ず見たことのある風景だと思います。点々とした町並み、深緑色の森林、明るい緑色や土色の畑に混ざって大量の黄色い面・・・私も昔初めてドイツに行った時、機内から見たこの風景が異様で、着いてドイツ人の友人に会うやいなやまず質問しました。「あの黄色い土地は一体何?」答えは「Rapsfelder (西洋アブラナ・ナタネ畑)だよ」でした。
工業大国ドイツは農業大国でもあります。利用できる土地の約52%が農地として使われており、小麦を始め麦類の栽培が半数を占め、次いでトウモロコシ、ナタネ、砂糖ダイコンが多く作られています。ドイツは寒冷な気候のため野菜や果物の栽培はあまり盛んではありません。キャベツ類やリンゴの生産がせいぜいで、あとはオランダやスペイン、イタリアなどからの輸入がもっぱらです。
さて、農地の中でも特別目立つナタネ畑のナタネは何に使われるのでしょうか。思いつく答えはとりあえず食用の菜種油でしょう。しぼりかすは家畜の餌に使われます。しかしここからは工業大国ドイツ、実はナタネは食用よりも他の目的で栽培されていたのでした。
チェーンソー、鉄道の転てつ器、油圧機等の潤滑油には菜種油が使われます。工業用の塗装剤、洗剤等にも菜種油が含まれています。製薬業界や化粧品業界でも重要な原料の1つです。しかし最近最も注目されている用途は「バイオ(ビオ)ディーゼル」という燃料。ドイツは2006年に施行されたバイオ燃料比率法により、ディーゼル油に5%程度の植物性のバイオディーゼルを混ぜることが義務づけられました。比率は年々上昇し、2015年には8%植物性が目標だとか。CO2ニュートラル(カーボンニュートラル)、環境に優しいを歌い文句にバイオディーゼルはみるみるシェアを拡大し、ドイツは世界のバイオディーゼル消費量ダントツ一位に輝いています。ドイツでディーゼルを給油したことのある型は、ディーゼルの横に書かれた「E10」という表記に戸惑ったのではないでしょうか。あれはいわゆるバイオ燃料が混ざっている印です。

しかし私はこれが本当に環境保護につながるのか非常に疑問に思っています。バイオ燃料の生産のために本来食用に使われるはずの小麦やナタネが使用され、人間や家畜の食べ物が値上がりします。バイオ燃料用に大量のナタネが要るので食べ物を作る農作地が燃料用に使われます。国内では生産量が足りないので海外の農地も燃料用に開拓され、貧しい農民は土地をバイオ燃料を製造する大企業に売らなければならなかったり、自分達の食べ物を作る代わりに燃料用の作物を生産することになったり。そして海外で作られたバイオ燃料はCO2を排出しエネルギーを消費する貨物手段でドイツまで運んでこなければなりません。そもそも人間の食糧と車の燃料とどちらが大切なのでしょうか。

(誰も言いませんが)バイオディーゼルにはもう1つ落とし穴があります。それは、最新の車はモーターがとても精密なので純度が高くない燃料を給油すると故障の原因になることです。ドイツでバイオ燃料比率法導入の議論があった当時、自動車メーカー各社は不可能だ、と猛反対しました。しかしそこは政治と経済の奇妙な関係で、気が付けば1社また1社とバイオ燃料使用に賛同し、導入が可決されたのです。ただ車の技術はバイオ燃料に合わせて変化したわけではないので、環境に(表向きは)優しいバイオ燃料も車には優しくないのです。私は2009年製のスマートという車のディーゼルエンジンモデルに乗っていますが、スイスでは快適に走るのにドイツに行くとなぜかエンジンの調子が悪くなり、故障ランプが点滅したり山道でのオートマチックモードのギアチェンジがおかしくなったりするので何度か修理に出しています。原因は何か埃が管やバルブに詰まっていたり、不明だったり。プロのメカニックが当てにならないので自分で「ディーゼル洗浄剤」なるものを買って給油の際に使ったら問題が解決することがわかりました。更に、なぜドイツに行ったときだけトラブルが起きるのか調べた結果、問題はドイツのE10、つまり私が毎回ドイツで給油しなければならないバイオディーゼルであることがわかりました。純度が低いので精密なエンジンには向かないのです。そのため最近ドイツのガソリンスタンドには「スーパーディーゼル」なるものがあり、これは植物燃料など混ざり物のない純粋な燃料で、車に優しいということです。お財布にはかなりの打撃ですが。


ところで今日の上空から見たドイツは黄色よりも青色が目立ちます。ドイツに海なんてあったっけ?いえいえ、この青はメタリックに輝くソーラーパネルの青。クリーンエネルギー大国ドイツは太陽発電にものすごく力を入れているので、国民が一丸となり我も我もと自宅の屋根や商工業施設の屋上にソーラーパネルを設置したため(もちろん国の促進政策で補助金が出たからですが。)、町並みが真っ青に見えるのです。私達が想像する赤い屋根瓦のロマンチックな古い街並はもう過去のもの。趣のある古い外壁は発砲スチロールの断熱材で覆われ、かわいらしい屋根は青いソーラーパネルで埋め尽くされ、エネルギー革命の結果として電気代が異常に値上がりし、国民は日々のパンにも苦しむ現状です。以前は原発反対を声高に唱えていた人々も、エネルギー革命後の最初の冬の電気代請求書を見た後は少しおとなしくなりました。当時、太陽発電は自国のエネルギー産業促進につながると意気揚々だったサイドも、蓋を開けてみればソーラーパネルも設置部品も全て中国からの輸入で、国内の太陽発電関連会社は次から次へ倒産していくのを見て、何かに気付いたようです。



ちなみにこちらは上からみた日本の中国地方(上)と九州南部(下)の春です。青い空、緑の山にはまだ残雪が見られ、川が流れ、畑や集落が広がっています。美しい日本をこれからもずっと美しく保っていきたいものですね。



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