ヨーロッパで暮らす ー 日独伊+瑞 日々の生活   メール
Home 日常生活 観光、旅行 お料理、レシピ その他あれこれ
カンピオーネ Campione d'Italia

アニメのカンピオーネ
じゃないよ
カンピオーネ(カンピョーネ、カンピオーネ・ディタリアとも表記)は人口2千人強、面積2,6平方キロメートル(そのうち陸地はわずか900平方メートル)の、スイス・ティチーノ州にあるイタリアの飛び地です。周囲をルガーノ湖とジギニョーラ山脈とスイスの集落に囲まれてイタリアから孤立していますが、登記上はロンバルディア州のコモ県に分類されます。

(入口の門)

西暦777年、ランゴバルド族の王トト・カンピオーネが遺言でこの土地をミラノのサンタンブロッジオ修道院に寄贈したのがカンピオーネの始まりです。12から14世紀にかけてのカンピオーネは優秀な手工業者の街として知られ、石工、彫刻家、画家、建築家などを各地に送り出しました。彼らはマエストリ・カンピオネージ(Maestri Campionesi)と呼ばれ、今日でも北イタリアのあらゆる場所でその作品を見ることができます。
1797年、ナポレオンはこの土地に到達すると全ての教会所有物を徴収し、カンピオーネをチザルピーノ共和国と改めます。1814ー15年のウィーン会議でスイス・ティチーノ州はカンピオーネを自国の領土にしようと試みますがイタリア・ロンバルディアと利害が衝突し、カンピオーネは結局イタリア王国の領土となります。同時にスイスとイタリア間の国境も定められ、今日まで残っているというわけです。ちなみに「ディタリア d’Italia」という語は、イタリア領であることを明記するために1933年にムッソリーニによって付け加えられたものです。街の入口正面にアーチ状の門が建てられたのもこの頃です。



カンピオーネの経済はスイスと密接に結びついています。通貨は主にスイスフランが用いられ、車のナンバーはパトカーも含めてスイス・ティチーノ州のものが使われます。カンピオーネは毎年相当な額の税金をスイスに納め、スイスが道路や病院、学校、警察などの公共事業を管理しています。電話はスイスコムの回線を利用するのでイタリア本土からはスイスの国番号41にティチーノ州の局番091が必要です。郵便番号はイタリアの22060とスイスの6911両方が使えます。1944年から1952年まではカンピオーネ独自の切手が発行されていました。第一次大戦中の1917年に最初のカジノが設立されます。当時の目的は「中立領域」に外国大使や要人を招き、緊張の解けた中で歓談しつつ国家機密を聞き出すことでした。今日のカジノはカンピオーネの主要産業で、唯一の収入源と言ってもいいでしょう。2007年に約8千2百万フランをかけて建て変えられた新しいカジノはティチーノ州出身の有名建築家マリオ・ボッタによるもので、ヨーロッパで一番大きなカジノとされています。

飛び地カンピオーネの税関はどうなっているのかというと、カンピオーネは欧州連合に属しているけれど関税法では欧州連合に属さない、ということです。イタリア独自の関税法があるということになっていますが、果たしてイタリアが検疫や調査などを行っているのかは不明です。
スイスの消費税は現在8%ですが、カンピオーネには消費税がありません。スイスとカンピオーネ間の取り決めで、カンピオーネ人はスイスで買い物をして消費税を払い、国境を越えてカンピオーネに帰っても払い戻しを受けることができません。逆にスイス人はカンピオーネで買い物をしてスイスに戻る際、税関申告をして8%の税を払う義務がありません。欧州連合加盟国の場合は別で、カンピオーネ人がイタリアで21%の消費税を払い家に帰るときは税関で払い戻しを受けられます。ヨーロッパの消費税はどの国もかなり高いので、払い戻し制度を利用すればカンピオーネ人はかなり割安に隣国でお買い物ができるというわけです。


(ルガーノ湖に面してそびえ立つ新しいカジノ)

(カジノの裏 パトカーはスイスのナンバーをつけています イタリアとEUの国旗も)



カンピオーネの住民は、スイス国内でスイス人と同様条件で働くことができます。イタリア・スイス間の条約では、所得税は居住地ではなく勤務地で払うことが定められているので、スイスで働くカンピオーネのイタリア人はイタリアの高い税ではなく税金天国スイスのわずかな税を払う恩恵に与れるのです。その一部がスイスの税務署からイタリアの税務署に送金されます。では自営業者や自由業の人は飛び地に住んでいても何の得もないのでしょうか。いえいえ、彼らは確定申告の際ユーロとフランを特別なレートで都合よく換算する権利があり、更に年間20万フランの所得までは一律に20%の控除が認められます。その他はイタリアの税制が適用されますが、これは税務署職員も理解できないほど複雑なので、実際どのように管理されているのかは不明です。カンピオーネには小さな銀行が2つありますが、大部分の住民はすぐ隣のスイスの金融都市ルガーノの、数あるプライベートバンクに口座を持っており実際誰が口座にどれだけ資産を持っているのかなどの情報はここだけの秘密というわけです。コモ市はカンピオーネのカジノから莫大な収益が得られるので、土地の住民個人の所得や資産を根掘り葉掘り問い質す気はあまりないようです。カンピオーネの生活費は周辺に比べてかなり高水準ですが、確定申告を上手にやれば生活費は手元にたっぷり残るので、カンピオーネがしばしばタックスヘブンと呼ばれるのもそのためでしょう。ここに住んでいるのはわずかな地元生まれの住民のほかに、イタリア本土から移住してきたイタリア人、スイス人、ドイツ人、その他欧州人など多国籍な人々です。不動産は買うも借りるも法外な値段なので、それなりの財力がないと移住できません。ちなみにドイツの税務署にとってはこれらの小国は目の上のタンコブなので、ドイツ人の移住者は本国から厳しく監視され、最悪の場合家宅捜索が入ります。イタリア人やスイス人はルガーノ湖に面したヤシの木が生える温暖な美しいこの街で悠々と暮らしていますが、ドイツ人は毎朝郵便受けに本国税務署からの手紙が入っていないかハラハラする逃避生活かもしれませんね。


(サッカー場からの風景)

(湖を横切る橋はアウトバーンA2号線)

(優雅に自家用ボートやヨットで水上スポーツをする億万長者たち)

(冬の景色も実にすばらしい)





+企業の商品開発アンケートやサンプル商品調査に参加して、ポイントに応じて現金や商品がもらえます+
マクロミルへ登録

Home 日常生活 観光、旅行 お料理、レシピ その他あれこれ


Copyright(C) 2012 Washira All Rights Reserved. フリー素材*ヒバナ *  *
inserted by FC2 system