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ツール・ド・スイス Tour de Suisse

家の前がいきなり
レース会場に変身

ツール・ド・スイスはスイスで最も規模の大きいサイクルロードレースで、毎年6月中旬に開催されます。欧州自転車のプロロードレースにおける3大レース(グランツール)と呼ばれる「ツール・ド・フランス」「ジーロ・デ・イタリア」「ヴエルタ・ア・エスパーニャ」に次いで重要なレースだと言われ、2005年にはUCI(国際自転車競技連合)プロツアー、2011年からはUCIワールドツアーという年間ツアー戦に属しています。

ツール・ド・スイスの歴史は長く、20世紀初頭の1908年までさかのぼります。この年に発足25周年を迎えたスイス自転車協会が、記念レースを開催しようと計画しました。1日で300キロの道のりを走るコースが考案されましたが、結局未開催で流れてしまいます。十数年後、ミュンヘン・チューリヒ間を走るレースが計画されますが、予算の関係でこれも計画倒れになってしまいました。その後、ツール・ド・スイスとジーロ・デ・イタリアに習ってステージ制のレースにしてはどうかという案が浮上し、ついに1933年、スイス自転車協会発足50周年に合わせて第1回ツール・ド・スイスが開催されることになりました。当時5つのステージから成るレースを制したのはオーストリアのマックス・ブッラという選手でした。以後、ツール・ド・スイス参加者の中には多くの有名選手が名を連ねるようになり、歴代最多優勝者はイタリアのパスクァーレ・フォルナータ、近年ではポルトガルのルイ・コスタが2012年、2013年と連続総合優勝を果たしています。2001年優勝のランス・アームストロングと2006年優勝のヤン・ウルリッヒはドーピングにより現在は優勝者リストから削除されています。

ツール・ド・スイスは9つのステージで構成され、平坦コース、山岳コース、タイムトライアルと、ステージレースの要素が全て織り込まれています。サイクルロードレースのトップイベントであるツール・ド・フランスが伝統的にツール・ド・スイスの2週間後に開催されるため、チームと選手はツール・ド・フランスのための最終調整としてツール・ド・スイスを重要視するようです。

総合成績1位の選手には「金のトリコット・シャツ」が授与されます。他のサイクルロードレースと同様に、総合成績の他、ステージごとにポイント賞、山岳賞、スプリント賞が定められ、賞金総額は16万ユーロ程度です。総額100万ユーロ以上の賞金が出るツール・ド・フランスに比べると控えめな予算ですね。

レースは全行程がテレビ、ラジオ中継されるのでヨーロッパ内はもちろん、日本でも近年JSPORTSが生放送するようになり、ファンはリアルタイムで楽しめるようになりました。公式映像はSRF(スイス放送協会)によるものです。



私のツール・ド・スイスの楽しみ方は、「自宅前観戦」。スイス・ティチーノ州の我が家は県道に面しており、これが平地のルガーノやベリンツォーナと言った主要な街と、急な山道であるサン・ゴッタルド峠の中間くらいの場所で、急勾配、急カーブが多く、自転車やオートバイでスポーティーに走るにはうってつけの道であるため、引っ越してきて10年以内に既に3回も自宅前の道路がツール・ド・スイスのステージに選ばれています。普段は1日中バイクの騒音に悩まされ、いつかあの傾斜急カーブを爆破してやろうと思うこともしばしばですが、この時ばかりは県道が特別有難く感じられます。レースの日程は綿密に計画されており、何時何分にどの地点を通過するかは公式サイトで確認することができます。通過時間に合わせて家の外に出て、嵐のように過ぎ去る一行を眺めて、また家の中に戻るというのが我が家の贅沢な観戦パターンです。

走ってくるのは自転車の選手だけではありません。コースの安全を確保するためのパトカーや警察のバイク、タイヤや自転車を積んだチームの車、機材やメカニックのサービスカー、緊急時に備えた救急車、そして、一番目立つのはスポンサーの宣伝カーの隊列です。ツール・ド・スイスの日程表を見ると、例えば13時15分に選手がA地点を通過するなら、12時15分に宣伝カーが同じA地点を先に通過するように書かれています。宣伝カーというのはスポンサーの商用車や特別塗装、特別仕様の山車のことで、何十台も連なって走行し、道端で選手を待っている観客に粗品や応援グッズを配って回ります。スポンサーのロゴ入りTシャツや帽子、旗、ストラップ、バッグや水筒、食品メーカーのスポンサーからはキャンディーやグミ、ジュース、アイスなどが観客に次々と手渡され、たちまち応援団の出来上がり、というわけです。あらかじめ大きな袋を用意して待っている観客も多いので、レースよりも粗品目当てに出かけてくる人々のほうが多いのでは、と思ってしまいます。


写真は「ツール・ド・スイス2014」、 2014年6月15日に行われた第2ステージ(ベリンツォーナ・ザルネン間)のレースの様子です。走行距離181km、途中にサン・ゴッタルド・パスやフルカ・パスを挟む過酷なコースで、「王者のステージ」と呼ばれるハイライトです。当日は朝から雨で、レース中も小雨や霧が妨げとなり、ますます厳しいステージとなりました。

筆頭スポンサーである保険会社vaudoiseの宣伝カー


たくさんの宣伝カーが音楽を鳴らしながらやってきます


グリュイエールチーズの車が観客にチーズを配っているところ。
手前はネスレ社のフリスコというブランドのアイスの宣伝カー


間隔を置いてから、パトカーが先導していよいよ選手がやってきます


先頭集団。左からBjörn Thurau (GER), Frederik Veuchelen (BEL), Philip Deignan (IRL), Reto Hollenstein (SUI)
一番右のCameron Meyer(AUS)選手はこの日トップでゴールしました


少し遅れてドイツのLinus Gerdemann選手


先頭集団と間隔を置いて、レースカーの先導で後方集団が一気にカーブを曲がって
上り坂を走ってきます


急勾配にもかかわらず、かなりのスピードです


小雨で悪天候だったので、レインジャケットを着ている選手もいます
中央左のピンクのジャージの選手が前回前々回と連続優勝のルイ・コスタだと思うのですが・・・


選手の後ろには機材を積んだチームカーが延々と続きます


塗装もカラフルで個性があります


一番最後は警察と、レースの終わりを告げる車。
Besenwagenというのは直訳すると「ほうき車」で、サイクルロードレースの最後尾を走ります。
レースの途中で疲労や病気、怪我などの理由で棄権する選手はこの車に乗り、ここでゼッケンを返却して正式に中退します。
1910年のツール・ド・フランスで当時の地元の民族伝承に由来して、ほうきを付けた車を走らせたのが起源だということです。


コース沿線住民として得することがもう1つ。選手は競技中に水分補給をしますが、不要になった水筒をしばしば空き地や道路脇に捨てていきます。しかし街や道路のど真ん中に捨てるわけにはいかないし、自然保護区域の空き地に投げ捨てるわけにもいきません。そこでうってつけなのが(選手にはそう思われている)我が家の庭。うちの庭は細長い形で道路とかなり長い距離を面していて、低いガードレールで区切られているだけなので、不要なボトルを投げ捨てるのに実に適しているのです。うちの庭を過ぎて数百メートル走ると急勾配の上り坂が始まるので、少しでも重さを減らすために、満タンの水筒を捨てて行く選手もいます。レース後に庭をパトロールすると、様々なチーム名の入った水筒があちこちで見つかります。試しに中身を確認したこともありますが、ミネラルウォーターだったりエナジードリンクだったり、スポーツドリンクや塩味のものや、様々な飲み物が入っていました。




道路脇でゴミ捨てにぴったりの庭ですが、厄介なのは、ロードレースの選手だけでなく、一般人も当然うちの庭にゴミを捨てていくこと。ペットボトル、タバコ、お菓子の包装からビール瓶まで何でも見つかります。どうせなら金塊とか札束なんかを捨ててくれればいいのに。




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