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スイスの滞在許可証Cを受け取るまでの道のり

EU圏外の人は
カード型になりました


旅行で海外に行く場合は、日本人ならほとんどの国でビザがなくても最大90日間パスポートだけで滞在することができます。しかし、長期滞在になると目的や期間に合わせた滞在許可が必要になり、これがないと国外に強制追放されたり再入国ができなくなるなどのトラブルに遭遇することもあります。

スイスにも当然外国人用の滞在許可証制度があり、目的別に細かいカテゴリーが設定されています。また、EUに属している国やその他ヨーロッパの諸外国と、それ以外の第三国で発給条件が異なります。我が家も主人はドイツ国籍なのでEU用の制度が適用され、入国後すぐに滞在許可証Bを受け取って5年後には定住のできる許可証Cに切り替えができましたが、日本国籍の私は第三国の出身として扱われるので定住の申請は10年後以降、などの条件が付きます。

スイスに引っ越してきた当時はEU出身者の同伴家族という形で私も同じタイミングで1年間という条件付きの滞在許可証Bを受け取り、1年後にもう一度Bを更新したときには5年間有効なものを発給してもらえました。5年後に滞在許可証Bの有効期限がもうすぐ切れるので添付の必要書類に記入して送るように、と手紙が来たので言われた通りにすると、数日後に管轄地域の外人局から連絡があり、定住許可証Cの申請書を渡されました。日本人は最低10年住まないと申請できず、私はまだ6年目なので該当しないと思っていたのに、もらえるならラッキー、と考えて申請書を提出して数日待ったら再び外人局に呼び出され、「先日のCビザの申請はちょっと手違いがあって、あなたはやっぱり今回も滞在許可証Bの延長という形になりました。5年後の次回はCを申請できるから、我慢してね。」とのことでした。最初からおかしいと思っていたので別にそれほど驚くことではなく、田舎の役所はそんなものかな、と感じた程度でした。

さて、延長したBビザも間もなく5年間の有効期限が過ぎるころになると再び外人局から手紙が来て、ビザのオリジナルと記入した添付の用紙を送り返すようにということです。言われた通りに手紙を出して、待つこと2週間、1ヶ月、2カ月経っても何も返事がありません。郵便事故でもあったのだろうかと外人局に問い合わせをしたら、書類はきちんと届いていて、今事務処理中なので待つようにとの返事でした。うかつにもコピーを取り忘れてオリジナルを送ってしまったので現在手元に何も滞在許可を示す書類がなく、なるべく早く新しいものが届かないと困るのですが、まぁ数週間でできるだろうと思っておとなしく待つことにしました。今回はもうスイス12年目に突入しているのでBからCへの切り替えになるはずなので、その関係で手間取っているのかも知れません。あまりうるさく催促して厄介な外国人だと思われるのも嫌だし、Cビザがもらえれば永住許可も同然なので連絡を待っていました。

同時期に確定申告のことで税務署の決定に不服申し立てをしたりして我が家の収入状況が確定できないようなトラブルも並行して進んでいたので、そのせいでビザの発給許可が遅れているのかとも考えました。定住ビザCは通常の滞在ビザBと違って失業してもスイス国内に残ったり、生活保護の申請をすることも可能でスイス国籍とほぼ変わらないくらいさまざまな恩恵が受けられるので、発給条件として一定の収入や貯蓄があることなども挙げられます。そのため過去数年分と最新の確定申告が明確でないと収入が不安定だと判断されて申請が取り下げになるのかも知れない、と思い、税務署との問題が解決するまで待とうと決めました。サラリーマンは給与明細を見せればいいのですが、我が家は自営業なので何をするにも面倒です。

申請をしてからもう10カ月以上が過ぎた頃、3年以上格闘した税務署との戦いもやっと終わって無事に確定申告が受理されて我が家の収入状況も明確になりました。これで外人局も納得してそろそろ通知をくれるだろうと待っていましたが、2カ月、3か月経っても音沙なし。そんなとき、日本の不動産登記の関係で海外在住の私の在留証明という書類が必要になり、これを発行してもらうためには現在住んでいる地域の管轄領事館(私の場合はジュネーブ)で有効なパスポートや滞在許可証などさまざまな書類を提出しなければいけません。この機会に外人局に電話をして一体私の滞在許可証問題はどうなっているのか問い詰めることにしました。

当時は私の住む村の近くにある外人局の出張所が担当でしたが、今は中央に統一されて30キロ離れた州都の外人局が管轄になったそうなので、そこに問い合わせをしました。何度も担当者をたらい回しにされた揚句、やっと話の分かる人につながって、名前や外国人登録番号などを伝えると、今まで1年以上待たされた理由などは特に明かされず、Bビザの延長手続き書類を送るからそれに記入して送り返すようにと言われました。もう10年以上住んでいるからCビザの申請ができるか聞いたら、私は過去にCビザの手続きを断ったからCは不要ということで登録されているという返事。私が断ったのではなく、外人局の不手際で勝手にCとBを勘違いされてBになったのだと言ったら、だったらCの手続きもできますよ、ということ。ただし、その場合は「犯罪経歴証明書」という書類が別途必要なので、イタリアの警察に行って発行してもらってください、と言われました。
「イタリア?何でイタリアなんですか?」
「だって、あなたはイタリア人でしょう?」
「いえ、日本人です。」
「でも当局のデータにはイタリア人って登録されてますけど」
「は?日本人です。提出したビザにも国籍は日本って書いてあるし、パスポートも日本です。」
「おかしいな・・・イタリア人じゃないんですか。じゃあ、スイスに来る以前に住んでいた国は?」
「ドイツです。」
「では、ドイツの警察で犯罪経歴証明書を発行してもらって、今から送る書類と一緒に提出してください。」
「ドイツに住んでいたのは1年未満ですが、本当に必要なのですか。」
「うーん、ちょっと待ってください。(上司にあれこれ質問すること5分間)えっと、日本人は犯罪経歴証明不要ということなので、とりあえず申請書類だけ記入して持ってきてください。」

何といい加減な。私は一体いつからイタリア人になったのでしょうか。ドイツなら留学していたことや夫の国籍などもあり理解できないこともありませんが、なぜイタリア・・・更にこの担当者を問い詰め作業の遅れた理由などを聞いたら、ティチーノ州の外人局にはイタリアから流入する難民や密入国者に対して滞在ビザをマフィア経由で不法に販売していた職員がいて、その関係で検察の家宅捜索が入ってパソコンやデータを押収されるなど不祥事があったため全てのデータがめちゃくちゃになっているのだとか。それもひどい話です。

とにかく何となく遅れた理由や役所の働きぶりが理解できたので、更に事態が悪化しないうちに手続きを終わらせてしまおうと急いで申請書を仕上げて直接外人局に赴きました。窓口の担当者は、申請書は問題ないがCビザの申請には国籍に関係なく出身国の警察が発行する犯罪経歴証明書が必須なので、イタリア語訳付きで用意してくださいと言います。これは本当に必要らしいので、早速申請手続きについて調べました。

日本の犯罪経歴証明書とは各都道府県警察または警察庁が発給するもので、該当人物の犯罪経歴の有無を証明する公文書です。警察証明書とも呼ばれていて、外国での滞在許可申請や留学時、就職時などに提出を求められることがあります。海外在住者は日本の最終居住地の都道府県警察本部か、在外公館で発行手続きができるということです。発行のためには指紋を採取する必要があるため、本人が直接出向いて申請しなければいけません。更に、在外公館で申請すると外務省経由で行ったり来たり審査が行われるため2カ月以上の時間がかかるということも知りました。日本の警察本部なら1週間程度で発行できるそうですが、本人又は代理人が受け取りに行かねばならず、郵送は行っていないということで、そのために一時帰国するのも大変なので仕方なく2カ月かけて在外公館から手続きをすることに決めました。ジュネーブ領事館に問い合わせたら、パスポートとなぜ警察証明が必要なのかを証明できる書類(外人局からの通知など)を持って来館すれば、30分くらいで手続きができて手数料は無料、後日郵送も可能ということでした。指紋の採り方は公館によって異なるそうで、例えばベルンではスイスの警察経由で行うため日数と手数料が余計にかかるのだとか。ジュネーブは領事館内で直接採取を行っているそうです。

ティチーノとジュネーブは地図上ではそれほど遠くありませんが、スイスは山が多いので実際には山の間を縫って北上してから西に向かい、更に南下して、というルートなので片道電車で4時間半かかります。私はティチーノでも田舎に住んでいるため、警察証明の申請のために朝9時に家を出て夜11時に帰宅という一日がかりの作業になりました。領事館内では必要書類に記入をして、両手の全ての指紋と第二関節あたりまでの全体像を採取しました。デジタル化されていると思っていたら、昔ながらの黒いインクをつける方法だったので領事館の担当の方も大変そうでした。一度失敗して全てやり直しになるなど苦労しましたが、何とかきれいに指紋の採取ができたので30分弱で手続きが終わり、帰りの電車が出るまで1時間ほど時間余った時間でレマン湖のほとりを散歩してから戻りました。

これで日本から犯罪経歴証明が届けば無事にCビザ申請が終わる、とほっとしていたところに村役場から電話がかかってきました。ビザ申請の関係で、収入証明が必要なので職業や給与明細などを提出しろと言われましたが、私は自営業兼主婦なので公的な証明がありません。そのため過去3年分の受理された確定申告と、当時開業のために会社登記に使ったイタリア語の書類を持って行きましたが、これではだめで最新の6カ月分の証明をするものが必要だという返事でした。公的なものはないので、仕方なく自分で過去6カ月分の貸借表や出入歴証明を会計ソフトで作り、主人の仕事内容や私の仕事内容を説明する文章を書いてサインをして提出しました。

日本の警察に警察証明の申請をして1ヶ月ちょっと経ち、まだ到着を待っている頃に今度は地元の警察から手紙が来て、滞在許可証の件でなるべく早く出頭するようにとのことでした。たぶん指紋の採集でもするのだろうと思って、手紙を受け取ったその日に出かけて行ったら担当者が書面を2枚持ってきて、1枚目にサインをさせられ、2枚目は簡単な質疑応答の用紙でした。警察官に口頭で書面の通りに質問をされて、「家族状況」「家は持ち家か賃貸か」「仕事の有無、収入の有無」「自分名義の車や不動産はあるか」「スイスの警察と問題になったことはあるか」「借金の有無」「自国での犯罪歴の有無」といった簡単な項目をチェックされ、口頭で答えて警察官がそれを用紙に書き込んで3分程度で質疑応答が終了。「これで全部です。来週ごろに新しい滞在許可証が届くと思います。」と言われました。は?そんなはずはない!「外人局に要求された日本の警察証明がまだできていなくて待っている状態なのですが。それに、EU圏外の外国人は生体認証付きの形式の許可証に切り替えが必要ではないのですか」と聞いたら、「そのへんは日本の領事館に聞いてください」との返事。なぜ日本の領事館?どうも地方の警察官は外国人関連の手続きには疎いようなので、とりあえずその場を去ることにしました。

ジュネーブの領事館で警察証明の申請をしてからちょうど2カ月で、お待ちかねの書類がやっと届きました。重要書類なので本来は直接受け取りに行くのが望ましいのですが、私は遠方に住んでいるので特別に郵送してもらいました。封筒は自分で開封すると無効になってしまうそうなので、開けずにそのまま外人局に持って行きます。窓口で渡して、職員が開封して不思議そうに眺め、「イタリア語の訳がないと困る」と言われたので「スイス公用語のフランス語とドイツ語が付いているから大丈夫だと思うのですが」と説明したら翻訳なしでそのまま受け取ってもらえました。ここでもう1枚書類に記入をさせられて、スイスで生活保護や援助を受けていないこと、家族構成や職業について質問され、サインをしてこの日の手続きは終了です。

警察証明を提出してから2か月ちょっと過ぎて、未だに何の連絡も来ないので外人局にメールで問い合わせをしました。すると、「Cビザの発給は平均9〜12か月かかります。あなたは申請したのが5か月前だから、まだ待ってください。」という返事。ドイツ人の夫は当時2週間でCビザが発給されたし、私の場合は正確には1年8か月前に申請して、最初の1年3か月はティチーノの外人局が私の書類を放置していた空白の時間なのですが、相手は役所なので文句を言っても通じません。しかし、私的な理由で滞在許可証と同様の何らかの公的書類が必要だし、この先何か月も無ビザで滞在していると国外に出た時戻って来られなくなる可能性もあるため、待ち時間を埋めるための「リターンビザ」を申請することを検討しました。

何か手元に書類を持っておきたいので、外人局に出向いて現在Cビザの申請中であるという内容の書類か、リターンビザのようなものを出してほしいと相談したら、係員が私のパスポートと外国人登録番号をデータバンクで照会し、「今Cビザの申請手続き中ですね。申請中ということを示した書面を発行できますけど。」とあっさり言われました。去年同じ相談をしたときは、別の係員に「そんな書類はありません」と言われたし、前回相談したときも「ありません」だったのに、ここ数週間で新しい法律でもできたのでしょうか。何はともあれ、その場であっさりスタンプとサインの入ったA4判の書類を無料でもらえました。これの有効期限は6か月だそうなので、6か月後にまだ正式なCビザが発給されていなければまた同じものを発行してもらうことになります。

6か月以上経ち、申請中であることを証明する書類の有効期限も切れてしまったので改めて発行してくれるように外人局に問い合わせました。申請手続きは進んでいるのか聞いたら、Cビザはすごく時間がかかるので、あなたのビザはまだ順番待ちです、と言われ、今は6月ですが今年中にもらえるのかと皮肉っぽく聞いたら、分かりませんという返事でした。このままだと3年経っても5年経っても永久に受け取れないような気がしてきました。

スイス建国記念日で祝日の8月1日の前日、7月31日に外人局から手紙が来たので何かと思ったら、「Cビザの申請手続きが完了し、受領されました。生体認証登録のため10日以内に当局で手続きの予約を行ってください。」という内容です。今年中には無理だと思って忘れかけていたので、嬉しいというより気が抜けてしまいました。早速担当者に電話をして、2日後に指紋採取や写真撮影の予約を取りました。

予約の時間に外人局に行くと、いつも長蛇の列ができている上の階ではなく1階のパスポート科に通されて、手数料147フランを支払うと待ち時間も全くなくすぐに自動写真機のようなボックスに通されて、写真撮影、両手の人差し指の指紋採取、署名の順に行って5分くらいで終了、「Cビザは来週郵送します」と言われました。これで目出度く全ての作業が終わり、あとは到着を待つだけです。

数日後、待ちに待ったCビザが送られてきました。私はEU国籍ではなく第三国扱いなのでカード型のものです。写真の出来はイマイチですが、とにかくこれで正式にスイスに滞在できることになりました。正式に国境を行き来したりスイスの空港からシェンゲン外に出たり、スイスで会社を設立したり不動産の売買や投資向け口座の開設、社会手当の受理までスイス人とほぼ同じことができる権利が与えられたというわけです。選挙権と兵役義務だけはありません。また、6か月以上スイスを離れると居住権が失効するという落とし穴もあるので、長くスイスを出るときには注意が必要です。5年ごとに更新しなければいけないのでその都度簡単なチェックもあります。これだけ苦労して手に入れたので、失効したり取り消されないように、慎ましくスイスで生活していこうと思います。





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