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庭小人の伝説

キッチュ (ドイツ語: Kitsch) とは
「けばけばしさ」「古臭さ」
「安っぽさ」を積極的に利用し
評価する美意識である。
(ウィキペディアより)


ドイツの住宅街を歩いていると、前庭の芝生の上に「白雪姫」に出てくるような小人の置物があるのをしばしば見かけます。赤いとんがり帽子をかぶって道具を手にしたこの置物は、「庭小人」「ガーデンノーム garden gnome」(ドイツ語では Gartenzwerg)と総称され親しまれています。古典から近代まで様々なデザインがあり、推進派と反対派が真っ二つに分かれて社会現象まで引き起こすガーデンノームは、今日ではその存在無しではヨーロッパの庶民の庭園を語れないほど重要なものとなりました。より理解を深めるために、まずは庭小人について基礎知識を学びましょう。



庭小人(ガーデンノーム)とは、昔は大理石や砂岩、陶器、最近はプラスチックで作られた小人の置物のことである。主な用途はガーデニングや庭の装飾である。2008年の統計によるとドイツ国内のみでも2千5百万体の庭小人が飾られているという。庭小人の基本要素は皮のズボンか前掛け、シャベルやランプなどの道具、ヒゲと赤いとんがり帽子という外見である。

「こびと」はゲルマン神話やギリシャ神話、グリム童話等に登場し、欧州では古くから馴染みのある存在である。昔は宮廷で娯楽の一環として小人症の召使を雇うことがあった。神聖ローマ帝国のカール4世の王宮に使えた小人ヤーコプ・リースなどが有名な例である。現存する最古の庭小人はバロック時代に作られた28体の大理石の彫刻で、ザルツブルグのミラベル宮殿の庭園に展示されている。庭小人の流行はこの時代に今日のオーストリア、ドイツ、チェコ、スロヴェニア地方まで伝わったが、1800年代に啓蒙思想が広がると、庭小人は悪評高いものとなり姿を隠すようになる。庶民の間では依然として人気を保ち、イギリス、ドイツ、オーストリア、スイスを始めその他欧州諸国の一般家庭の前庭に飾られた。マイセン磁器製作所は、1750年前後に貴族の注文で数多くの小人の置物を製作した。テューリンゲンのテラコッタ業者もこの当時、王侯の狩猟用別荘の庭用に、動物型の置物に加えて庭小人を製作した。テューリンゲンではその後も庭小人の製造文化が続き、大量生産のラインが組織され、ドイツ製の庭小人を世界中に輸出するまでに至った。しかし第一次、第二次大戦の影響で輸出に歯止めがかかり、ナチス時代には庭小人はドイツの景観を損なうものとして禁止項目に数えられ、再び姿を消した。

戦後の復興時代を経て、人々が再びガーデニングに喜びを見出すと、庭小人も復活し、庶民の庭に飾られるようになった。しかし同時に庭小人はしばしば「悪趣味」「偏狭」「俗物プチブル」「貧乏市民」などの代名詞として用いられることになり、1960年代にその悪名は頂点に達した。1990年代にチープな俗悪品が逆にモダンでカワイイと見なされる風潮が起こると、庭小人もその流れに乗って再び台頭する。古典的な本来の小人の姿だけでなく、現代的な衣装や挑発的なポーズ、政治家や有名人を模倣した小人など様々な新しいモチーフが生み出され、愛好家も増えている。1981年にはスイス・バーゼルに本部を置く「国際庭小人保護連合」が設立され、「小人学(ナノロギー)」と題して庭小人に関する様々な定義を提唱している。例えば「真の庭小人は最大でも身長69センチを限度とし、赤いとんがり帽をかぶり、ひげを生やした男性像でなければならない」などである。庭小人に関する組織や運動は他にもある。1990年代にフランスから起こった「庭小人解放前線」では、小人(妖精、土の精霊)を本来の住処に還すべきだとして、各地で大衆の庭に置かれた庭小人が持ち去られ、森や山の中に置かれるという窃盗事件が各地であった。同時期に起こった「旅する庭小人」という社会現象は、旅行の際に庭小人を一緒に持って行き、観光地を背景に庭小人の頭を前面に出して写真を撮るというものである。2001年に公開されたフランス映画「アメリ」で、アメリが父親の庭小人を盗んで各地でその写真を撮って彼に手紙を出すエピソードがあるが、これはまさしく庭小人解放前線と旅する庭小人現象である。「ハリーポッター」シリーズで魔法使いの子供が捕えて捨てる庭小人(ノーム)は、起源は同じだがいわゆる庭園装飾用の庭小人とは外見が著しく異なる生物である。

(映画「アメリ」の1シーン)

テューリンゲンでは今日もドイツ製の庭小人製作の伝統が続いており、「庭小人博物館」「庭小人公園」など様々な施設も存在する。しかし残念ながら市場には東欧やアジア製の安価な庭小人が広く出回り、陶器製の一体一体手作業で絵付けされた伝統的な庭小人を見かけるのは稀なのが現状である。



基本の庭小人   首切り役人の庭小人 ナイフで刺された庭小人の死体 サッカーファンの庭小人



冗談のような部分もありますが、全て事実です。外国に移住するドイツ人の中には、祖国の思い出として持ってきたガーデンノームを庭に飾る人も少なくありません。アメリカやオーストラリアでガーデンノームを見かけたら、ドイツ系移民だと思って間違いないでしょう。本国では(オーストリアやスイスでも)ホームセンターや園芸用品店、青空市場で小さいものなら5ユーロ程度から手に入るので、少し変わったドイツのお土産を探してみるのもいいでしょう。ただし、お尻を出したり中指を立てて挑発するようなポーズの小人には注意。こういう庭小人が原因でご近所と冷戦が始まる例は少なくありません。





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