ヨーロッパで暮らす ー 日独伊+瑞 日々の生活   メール
Home 日常生活 観光、旅行 お料理、レシピ その他あれこれ
洗礼 本当にあった怖ーい話

これは12世紀の洗礼盤
洗礼はキリスト教に入団するための儀式で、教会で洗礼盤という水の入った桶に体を浸したり、頭部に水を注いだりして行われます。式を執り行うのはその教会の司祭様や牧師様で、大抵は結婚式などと同様に親族や友人が参列して行います。古代は死の直前に自分の意思で洗礼を受ける習慣があったようですが、中世以降は親の信仰に基づいて幼児に洗礼を受けさせることがほとんどとなりました。当時は乳幼児の死亡率も高かったので、赤ん坊も天国へ行けるようにと生まれたらすぐに洗礼を受けさせることは非常に重要だったのです。「幼児洗礼」については、見分けのつかない子供を親の宗派に入れるというので、本人の信仰の確認ができないためこれを認めていない教派もあります。しかしながら両親がローマカトリックの家庭はほぼ全員、子供が生まれると数週間から数カ月の間に洗礼を受けさせるようです。心の信仰に従うことはもちろんですが、西欧ではカトリックでないと将来不利になる事柄がたくさんあるから、というのも実情でしょう。特に田舎では世間の目も気になるし、キリスト教の幼稚園や小学校にはキリスト教徒しか入学できません。教会で結婚したりお墓に入れるのも信者だけ。最近は変わりましたが昔は履歴書に必ず「信仰」という欄があり上司がカトリックだとカトリックの応募者が優先して採用されることは珍しくなかったそうです。ちなみに個人の確定申告用紙にも信仰を記入する欄がありますが、これは教会税を取るためのもので、キリスト教徒だとドイツでは10%くらいの教会税を納付せねばなりません。

カトリック教会では洗礼の際に洗礼名として名前を授かります。昔はキリスト教の聖人にちなんだ名前しか認められませんでしたが、今日は規則も少し緩くなったようです。日本では難読な名前やキラキラネームなる不思議な名前が流行っているようですが、こちらの親は名前に関しては保守的で、今でもマリア、アンナ、パウル、ヨハネスなどの古い名前を頻繁に見かけます。

洗礼の際にもう1つ重要な役割を果たすのは、両親以外の洗礼立会人と呼ばれる人物です。名親、代父とも呼ばれ、第二の父親(もしくは母親)として両親と共に、洗礼を受けた子供を見守っていく使命を受ける重要な人です。伯父、叔母など身近な親族がこの役目を引き受けることが多いようです。子供の両親から名親役を頼まれることは信頼の証であると同時に大変な名誉でもあります。

予備知識を得たところで本題に入りましょう。ここからが本当にあった怖い話です。

第一次世界大戦の傷跡が残る1920年代、中央ドイツの田舎の小さな村で男の子が生まれました。信仰深い両親は生まれたての赤ん坊に洗礼を受けさせるために、すぐさま親戚一同連立って村の教会へ向かいました。さて、洗礼式を執り行うのはもう長い事この村に住んでいる高齢の神父様。慣れた手つきで儀式を進め、赤ん坊の頭に聖水をかけ、名前を授ける段階になり、神父様は両親に尋ねました。「この子に何という名前を授けるかな。」母親がおごそかに答えます。「・・・ヴェルナー・ヨーゼフという名をお願いします。・・・」「何、フム、では神の子ベルンハルトに祝福あれ!」「神父様、ベルンハルトではありません、ヴェルナーです!」「何じゃと、ワシは耳がチト遠いのだ・・・もうベルンハルトと命名してしまったワイ。」「でもこの子はヴェルナーヨーゼフと名付けるつもりだったのです!」「ううむ、仕方ない、ヴェルナーヨーゼフも足してしんぜよう。神の子ベルンハルト・ヴェルナー・ヨーゼフに祝福あれ!」こうして赤ん坊はベルンハルトヴェルナーヨーゼフというトリプルネームを授かることになってしまったのでした。


洗礼式は神に信仰を誓う神聖な儀式ゆえに、一度言ったことを取り消すことはできません。一度神の名において名前を授けたらそれで決まりなのです。結婚式で「あなたは誰々を永久に愛することを誓いますか」に「はい」と答えた後でやっぱり「いいえ」とは言えないのと同じです。現代では出産は病院で行い、出産届や名前の決定など全てが済んで落ち着いてから改めて洗礼式を行うケースがほとんどですし、何人もの赤ちゃんが並んで同時に洗礼を受けることもあるため、名前はあらかじめ神父様に伝えて紙に書いてあるのでこんなトラブルはまず起こりません。ご心配なく。
ちなみにこの話の主人公のベルンハルトヴェルナーヨーゼフは私の義父です。役所の正式な書類にはこのおびただしく長い名前が載っていますが、普段の生活では単にヴェルナーと名乗っていました。銀行口座や署名などもヴェルナーで通していたようです。あまり長い名前は記入欄におさまらないので。じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつ・・・・・





+企業の商品開発アンケートやサンプル商品調査に参加して、ポイントに応じて現金や商品がもらえます+
マクロミルへ登録

Home 日常生活 観光、旅行 お料理、レシピ その他あれこれ


Copyright(C) 2012 Washira All Rights Reserved. フリー素材*ヒバナ *  *
inserted by FC2 system