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ドイツでそけいヘルニアの手術をする 前編 

ヘルニア(hernia)とは、体内の臓器などが、本来あるべき部位から「脱出・突出」した状態を指す。 鼠径ヘルニアは
脱腸とも呼ばれています。

数年前のある日の朝、主人が突然脚の付け根のあたりが痛いと言いだしました。この痛みには覚えがあるらしく、痛切な表情で真っ青になって「そけいヘルニアかも」と一言。彼は先天性のそけいヘルニアがあって、10歳の時に一度手術をしているのですが当時そけいヘルニアとへそヘルニアと盲腸を一度に処理する開腹手術をして、ものすごく痛かった記憶があり以後手術や病院がトラウマになっているそうです。そのため、そけいヘルニアが再発したとするとまたあの死ぬほど痛い手術をすることになるので考えただけで気絶しそうだと。
「脱腸」とも呼ばれるそけいヘルニアは中高年の男性に多い症状で、加齢やストレス、重労働などで筋膜が弱くなり破れてしまい、本来お腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が筋膜の間から皮膚の下に出てしまう病気です。放置していても治らないので治療するためには手術が必要です。難しい手術ではないので日帰り治療を行うクリニックも多く、人工補強材を用いて筋膜を閉じ、数日後にはデスクワーク、術後2週間くらいで簡単な運動ができるようになります。
さて、主人は「この痛みは何かの間違いかも」「時間が経てば消えるかも」などと言って数週間、数か月過ごしましたがいつまで経ってもそけい部に鈍い痛みや違和感があり、どうしようもないので病院に行くことを決意しました。主人はイタリア語ができないので自宅の近くの病院では不安らしく、ドイツの実家の近くの総合病院で診てもらうことになりました。注射1本でも怖がる恐怖症患者だということをあらかじめ伝えてあったので先生も看護婦さんも慎重に対応してくれました。先生が患部を指で押して診察した結果は、右側に軽いヘルニア、左側も軽い筋膜の衰えが見られるというものでした。飛び出た部分が戻らなくなってしまうカントンになる危険がある大きさではないので、今すぐ手術をする必要はないと言われ、慢性的な痛みは幼少期のトラウマから幻覚が起こっている可能性もあるとして精神安定剤的な痛み止めを処方されました。ただ、ヘルニアの傾向はあるので今後痛みが大きくなってきたらいずれは手術が必要だということでした。その日はそのまま家に帰りましたが、主人は嬉しいやら悲しいやらで混乱していました。

それから1年、2年経ち、激痛などはないものの慢性的な痛みは絶えずあり、歩くのが辛いことや、恐怖心から重いものを持ったり庭仕事や車いじりなどができなくなってしまい、うつ病気味になることさえあるので「このままでは人生がだめになってしまう」と主人が自ら手術を受ける決意をしました。ヘルニア手術について調べると、子供の時のような開腹手術ではなく今は腹腔鏡を使った方法が主流で、わずかな傷だけで簡単にできることが分かりました。更に調べると腹腔鏡手術に使う器具は通常直径5ミリから1センチ程度の大きさですが、中には低侵襲(Minimally invasive)として直径2ミリの器具を使って痛みも傷あともほとんどない手術を行うクリニックもあることが分かり、恐怖症の主人は「これは自分にぴったり」と早速ドイツで2ミリの器具を保有し低侵襲手術を行っている病院を探し始めました。


最初に見つけたのは大聖堂で有名なK市の中心部にあるプライベートクリニックでした。口コミでは「まるでホテルのような設備でリラックスできる」「食事が素晴らしい」「痛みがほとんどない」など絶賛されていたので電話をして聞いてみると、1泊2日の入院手術で両側のそけいヘルニアだと最低4千ユーロ(約55万円)とのこと。私達はドイツの保険の対象ではないので全額自己負担です。日本で日帰り手術をすると20万から25万程度だと考えると少し高い気がします。更に執刀医の先生の名字は日本語に訳すと「刺刀」。何となく怖いので他の病院を探すことにしました。
次は北の港町H市の総合病院を当たってみました。電話に出た受付の女性はぶっきらぼうですが、取り次いでもらった外科の先生は優しい人で手術の方法や注意点などを細かく説明してくれました。スイスから1000キロの道のりを行くので何度も通院することはできないと伝えると、最初からオペの日程を決めて前日に健診という形で来れば大丈夫だと言われました。料金は3500ユーロ(約47万円)程度ということです。入院するヘルニアの手術はこれくらいが相場なのだそうで、納得できたので再び受付の女性と話して1ヶ月後に手術の予約を入れてもらいました。
しかしその後思わぬ急用ができてしまい、予約の日にH市に行くのが困難になりそうなので病院に電話をして日程を変更して2週間ほど後らせてもらうことにしました。受付の女性は相変わらず無愛想で「はいはい」と嫌そうに変更手続きをしているようでした。
さて、数週間後のある日、ドイツから電話がかかってきました。相手はH市の総合病院で、「今日の14時に手術の予定が入っていますが、今どこですか?すぐ来られますか?」と。「最初に今日の予約をしましたが、取り消して変更してもらったはずです」と伝えると、変更の話は聞いていない、新しい予約も入っていない、今すぐ来られないなら向こう2カ月は空きがないので受付できませんと言われました。変更手続きをしたはずの担当女性の名前を伝えても「知りません」の1点張りです。今から1000キロ走ってオペに行くのは当然不可能なので改めて連絡します、とその場は電話を切りました。数時間後に受付の女性からメールが来て、2ヶ月後のある日の日付で予約をするから、頭金として4千ユーロを振り込むようにという内容でした。日程も費用も最初の話と全く違うし、こうなるとどんなに先生がいい人でもこの病院の経営体制に疑問を感じるのでお断りして別の病院を探すことにしました。



大きな総合病院は懲りたので、私立の小規模な医者を探しているとネットの口コミで高い評価を得ていて「ヘルニア専門クリニック」として名高い医院が見つかりました。バイエルン州の大都市M市の優雅な一角にあり、低侵襲手術を売り物にしていて術後の痛みは最小限で先生の腕は素晴らしいとか。電話をすると受付の女性が親切に対応してくれました。先生は不在なので折り返し電話しますということで電話を切って、次の日に執刀医から電話がかかってきました。ちなみに先生の名字は訳すと「地獄の閂(かんぬき)」。さて、地獄の閂氏の第一声は「私は権威ある専門医である。」そして、主人がこれまでの経緯や体調、痛みなどについて話すと「あなたは体重が70キロ程度しかない?そりゃヘルニアではありませんよ。手術の必要はないでしょう。」これで通話は終わりです。

主人はしばらく何も言えず、開いた口が塞がらないと言う感じでした。ここ数日はそけい部の鈍痛がかなり辛いらしく、一刻も早く手術してしまいたいと思っていたので明日にでもM市に行くつもりだったのに、地獄の閂先生の対応がこれではどうしようもありません。低侵襲手術のできる病院とはどうも縁がないようなので、こうなったら腹腔鏡手術のできる所ならどこでもいいと割り切って最初に診察を受けたドイツの実家の近くの病院に聞いてみました。事情を話すと親切な看護婦さんが2週間後に手術、前日に健診、状況に応じて1泊から3泊程度の入院の予約を取ってくれました。この病院では腹腔鏡手術で使うカメラは直径1センチ、両サイドの器具は直径5ミリということで、全身麻酔で施術をし、術後も強力な痛み止めがあるので恐怖症でも大丈夫だそうです。費用は2泊の入院や諸経費を含めて3千ユーロ(約40万円)ほどが目安と言われました。他の(自称)専門クリニックより格安で、電話の対応や経営体制もしっかりしているので主人はもう2ミリだの5ミリだのというこだわりは捨てて喜んでこの病院に行くことに決めました。

ドイツでそけいヘルニアの手術をする 後編





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