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コロンバ Colomba

甘くて美味しい
大きな菓子パン

毎年イースターの季節になるとイタリアのスーパーやパン屋、ケーキ屋、カフェなどに不思議な形の大きな菓子パンが並びます。透明の袋に入ったもの、包装紙で包んで大きなリボンをかけたもの、カラフルな印刷の箱に入ったものなどさまざまで、表面のアーモンドとざらめ糖が何とも美味しそうに見えます。

これは「コロンバ」と呼ばれるお菓子で、特にミラノを中心とするロンバルディア地方ではイースターの典型的な菓子パンとして知られています。コロンバとはイタリア語で「鳩」の意味で、十字型にも花にも見えるこの菓子パンの正体は、羽を広げた鳩をイメージした象形パンです。小麦粉とイーストを使った甘いパン生地にオレンジピールを混ぜて、メレンゲと粉末アーモンドの上掛けをして焼き上げたもので、味はクリスマスのパネトーネとよく似ています。大きさは750グラムから1キロ程度のものが主流で、100グラムくらいの小さなコロンバは「コロンビーナ(コロンバちゃん)」という名前で売られているのを見かけます。



コロンバの由来にはいろいろな説があり、最も一般的なのは1176年に北イタリアのロンバルディア地方で起こったレニャーノの戦いに由来する伝説です。フリードリヒ一世率いる神聖ローマ帝国と北イタリアの地方都市が一丸となったロンバルディア同盟との戦いで、イタリア側のミラノ軍の頭上に2羽の鳩が舞い降りたのをロンバルディア同盟の勝利を示唆する神のお告げとして認知したのがきっかけで、今日でもミラノの聖シンパティカーノ教会では記念日に2羽の鳩を放つ習慣が残っています。

もっと古い伝説では、西暦572年のイースターの前日に、ロンゴバルド人の王が現在のパヴィア市付近に侵攻したとき、地元のパン職人が平和の象徴として鳩の形をしたパンを差し出したという話があります。別の伝説によると、612年頃にアイルランドの聖職者であった聖コロンバンがロンゴバルド族の女王テオドリーナを訪問したとき、女王はコロンバンと従者の僧侶たちを豪勢な昼食でもてなしました。しかし、この日は肉食が禁じられている金曜日だったので聖職者たちはせっかくの御馳走を食べることができません。困った聖コロンバンは右手を肉の上に掲げて十字を切り、肉の塊を鳩の形をした白いパンに変えて、女王の用意してくれた御馳走を楽しむことができたと言われています。



現実的な歴史を見ると、コロンバを初めて商品化したのはミラノで1919年に創業した製パン・製菓会社の「モッタ社(Motta)」でした。クリスマスのパネトーネの生産で有名な会社で、クリスマスの時期以外にも同じ製パン機と同じ材料を使って何かお菓子が作れないだろうかと思案した結果、平和や聖人の象徴である鳩をモチーフにしたイースターの菓子パン「コロンバ」が誕生し、1930年代からミラノを中心にイタリア各地に広まって今日ではほかのパネトーネメーカーやパン屋、菓子屋などが揃って作る有名なお菓子になりました。ちなみに南イタリアのシチリア地方には別の伝統的な「コロンバ」があり、北イタリアのような柔らかいイースト生地の菓子パンではなくスパイスを入れた少し硬い生地で作ります。
(北イタリアのコロンバの切り口はこんな感じ)

コロンバの基本的なレシピは、バターと砂糖が多めで卵や牛乳もたっぷり入れた甘いイースト生地をベースにオレンジピールを混ぜ込んで、鳩の形をした紙の焼き型に流し込み、卵白と砂糖、粉末アーモンドで作るマカロンのような上掛け生地を乗せてアーモンドとざらめ糖を飾って焼き上げるものです。オレンジピールを入れないもの、レモンピールや蜜漬けのアンズや洋ナシ、チョコチップなどを入れたもの、ヘーゼルナッツやバニラのクリームが入ったもの、チョコレートでコーティングしたものなどバリエーションはメーカーやお店ごとにさまざまで、基本の「コロンバ・クラシカ Comba classica」と並んで人気です。代表的なメーカーは「モッタMotta」、「バウリBauli」、「バロッコBalocco」、「パルアーニPaluani」、「メレガッティMelegatti」、「マイナMaina」、「トレ・マリエTre Marie」などパネトーネと同じ会社で、カルフールやコープなどスーパーマーケット・チェーン店も自社ブランドのコロンバを販売しています。工場生産のものは取っ手が付いた紙の箱に入っていて、美味しそうなイラストや写真が付いているものが目立ちます。個人経営のパン屋やケーキ屋、街中にあるカフェやバールではプラスチックの袋やラップで包んだ本体を紙や布で更に包装して太いリボンをかけたラッピングのオシャレなコロンバが置いてあります。値段は大手メーカーの1キロサイズが4~7ユーロ程度、パン屋やケーキ屋では500グラムから750グラムくらいのものが10~20ユーロで購入できます。


(工場製のコロンバ・クラシカ。箱のデザインがいろいろあって味もメーカーごとに多少違います。)



(こちらはチョコレートやクリーム、全粒粉を使ったバリエーションや、パン屋、お菓子屋で売っているコロンバ。)


生地の味はパネトーネとほぼ同じで、ふわふわでしっとりしたイースト生地が楽しめます。違いはパネトーネにはレーズンが入っていて、コロンバにはマカロンのような上掛けがしてありアーモンドが乗っていることくらいです。上掛けとざらめ糖により、コロンバのほうが甘みが強く感じられるのも特徴です。パネトーネと同じく日持ちがするので、未開封の状態で3か月くらい保存が可能です。イースター前になると訪問時の手土産にコロンバを持って行くことが多く、どの家にもコロンバが山積みになっていることがあります。これはクリスマス前のパネトーネとパンドーロも同様で、もらう方もあげる方も「またか」と思っていますが、伝統なので毎年同じことを続けるのが風物詩です。

我が家は訪問客がほとんどいないのでコロンバやパネトーネをもらうことは滅多にありません。しかし私は一年中食べたいほど好きなので、毎年クリスマスの後には投げ売りになっている半額のパネトーネ、イースターの後には投げ売りのコロンバを大量に買うのが我が家の伝統です。この方法だと人気のある珍しい商品は手に入りませんが、基本の「パネトーネ・クラシコ」や「コロンバ・クラシカ」が一番美味しいと思うので毎年同じことを続けています。


投げ売りで手に入れたパネトーネとコロンバの山。本当は倍以上の量がありましたがかなり消費しました。パネトーネは経験上、賞味期限後も5カ月くらい持つので次のクリスマス前まで食べられます。コロンバは上掛け部分がデリケートなので賞味期限後は2カ月くらいで食べきるのが無難です。







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